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僕が書きたいことをひたすらに書き綴る、自己満足のブログです。

SQuBOK V2をクオリアちゃん(仮名)と読んでいこう 第2話

前回までのあらすじ

mhlyc.hatenablog.com

 

酔った勢いで書いた記事なのですが、これは自分の勉強に良さそうだなーと漠然と思ったので

今日も「SQuBOK V2をクオリアちゃん(仮名)と読んでいこう」の続きを書くことにしました。

(本編で本読んでないじゃん!というツッコミはご容赦ください・・・)

 

こちらも再掲。

登場人物紹介

※絵は書けないので、キャラの姿は想像で補ってください。

伊敷 孝男(いしき たかお)

意識高い系。口癖は「まあ、俺のモットーは"高品質"だから」。人の話は一応聞く。

 

佐藤 大輔(さとう だいすけ)

伊敷の同僚。いつも伊敷の尻拭いをやらされている。すぐ怒る。

 

クオリアちゃん

突如、伊敷の部署に配属された中途採用の女性。本名は不明だが「クオリア」と名乗っている。見た目は女子大学生。品質の話になると語りだす。ツンデレ

 

では本編いきます!

 

第2話 「洗練されたデザインにしていれば売れるなんて、勘違いも甚だしいわ!」

 

佐藤と伊敷は、Webブラウザ上で動作するシステムの開発業務に従事していた。

「佐藤!ちょっとこの画面見てくれよ!」

伊敷は興奮した様子で佐藤に話しかけた。

「なに、どうしたの・・・おお〜、すげえデザイン凝ってる!」

伊敷が設計、開発したWeb画面はデザインが洗練されていて、古くから運用されている社内システムなどとは大きく異なっていた。

「きちんとデザインとかUI/UXの本とか読んで勉強したんだぜ!いやー俺頑張ったわ、マジで」

伊敷はとても誇らしげに言った。

「すげえなあ〜。テストは俺がやるんだよね?」

佐藤が確認する。

「そういう分担だったと思うけど。じゃあテストよろしくね〜」

「了解〜」

こうして、佐藤は伊敷の開発した画面のテストをすることになった。

 

ー数時間後ー

「伊敷」

「おう、どうした・・・あれ?なんか怒ってる?」

伊敷は佐藤の雰囲気から何かヤバそうなものを感じとった。

「あのさ・・・お前の作った画面、まともに動かないんだけど」

伊敷はプロジェクトで使っているバグ票管理システムを見た。伊敷の作った画面について、ここ数時間で5つ以上のバグが登録されていた。

「これは・・・あー・・・」

伊敷はバグの内容を読んで、全て自分が作り込んだバグだと理解した。

「悪い、ボタン周りとかそのへん、全然テストしてなかったわ」

「デザイン凝るのもいいけどさ!!さすがに基本的な動作くらい確認しようぜ!!ボタン押したのに反応しないとか違う画面に遷移するとか、ちょっと酷すぎるだろ!」

「いやまあでもさ、アップルとかも優れたデザインの製品作ってるじゃん?だからデザインも大事かなって・・・」

「言い訳は・・・って、あっ。クオリアちゃん、お疲れ」

二人が口論する中、クオリアちゃんが打合せから自席に戻ってきた。

「お疲れさま。なんかもめてるみたいね」

伊敷と佐藤はこれまでの経緯をクオリアちゃんに説明した。

「・・・なるほどね。状況は理解したわ」

「で、クオリアちゃん。どう思う?」

佐藤がクオリアちゃんに尋ねた。

「そうね・・・二人は『魅力的品質』とか、『当たり前品質』って言葉は聞いたことはある?」

「なんとなく聞いたことはあるような・・・」

「顧客の求める品質をモデル化した考え方として、『狩野モデル』というものがあるの。この狩野モデルは、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏が提唱したもので、海外でも"Kano Model"という名称で知られているわ

「そんなのがあるんだ・・・」

「狩野紀昭氏は、『魅力的品質』『一元的品質』『当たり前品質』という視点で品質を定義したの。狩野モデルにおいても、品質がこの3つに分けられて定義されているわ」

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「一つずつ説明するわね。まず『当たり前品質』だけれど、これは『充足されて当たり前、不充足だと不満』なもの。つまり、最低限確保すべき品質のことね。携帯電話で言うなら、通話音声が聞き取りやすいのは当たり前品質だと言えるわ。『通話音声が良い!』なんてわざわざレビューするユーザーなんて今どきほとんどいないでしょう。良いのが当たり前になっているから。

今やっている開発で言えば、画面のボタン押下による画面遷移のような、基本的な機能が正しく動作するかということ。どんなにデザインが優れていたとしても、ここをおざなりにしてしまってはユーザーの満足は得られないわ」

佐藤が伊敷の方をじろりと見た。

「反省します・・・」

「次は一元的品質ね。これは『充足されれば満足、不充足だと不満』というもの。携帯電話ではバッテリーの持ちみたいなものかしら。今やってるシステムで言うなら・・・応答時間の早さとかかな。あまりに酷いと文句を言われるし、逆に優れていればユーザーにきちんと評価される部分だと言えるわ」

「当たり前品質は、優れていても評価されないのに。こっちは評価されるんだな」

伊敷が図の「一元的品質」を指差しながら言った。

「良いところに気づいたわね。その通りで、当たり前品質は結局『充足されるのが当たり前』なものだから、そこを追求していくだけではユーザーの満足を得ることは難しいのよ。それに対して、一元的品質に特化することは他の製品との差別化要因になることもあるわ」

「なるほど・・・」

「じゃあ、最後の『魅力的品質』について説明するわね。これは、他とは大きく差別化できる魅力的な機能やデザイン、特性があるときに充足されるものよ。アップルの製品なんかはこの顕著な例ね。アップルの製品におけるUI/UXは、魅力的品質として差別化の大きな要因となっているわ。」

伊敷は大きく頷いた。(アップルファンなのだろうか?)

「別にUIやUXがそこまで優れていなくても、使いたい機能が問題なく使えればユーザーとしては特に不満を感じることはないわ。それでも、ひとたびその魅力的なUI/UXに触れれば、ユーザーは魅力的な製品だと感じるし、熱烈なリピーターとなることだってある」

佐藤は納得いかない表情だ。

「でも実際は、iPhoneを使う人もいればAndroidスマホを使う人だっているし、感じ方は人それぞれなんじゃないか?」

クオリアちゃんは頷いた。

「その通りよ。魅力的品質は強力な差別化要因になり得るけれど、人によって『何を魅力と感じるか』は往々にして異なることが多いわ。だから、製品開発の際にもこれらの品質をうまくバランスをとって実現していく必要があるの」

「話を戻すわね。今回伊敷くんが実装した画面は、魅力的なデザインで実装されているけれども、基本的な機能が正しく動作しない。これは、まさしく『斬新なデザインさえしていれば顧客の満足が得られるだろう』という思い込みの招いた結果で、当たり前品質をないがしろにしているわ。したがって、画面単体で見た品質は低いと評価せざるを得ない」

 伊敷はショックを受けたようで、黙って話を聞いている。

「もちろん、基本的な機能さえきちんと作っていればいいというわけでもないの。テストの7原則の一つに『バグゼロの落とし穴』といわれるものがあるけれど、それと一緒で、たとえたくさんのバグを見つけて修正したとしても、作ったシステムがユーザーの期待を満足しなければ、それは役に立たないのよ」

 「じゃあ・・・具体的にはどうしたらいいんだ?」

伊敷は弱弱しくクオリアちゃんに尋ねた。

「まずは当たり前品質をしっかりと充足するために、基本的な機能はきちんと網羅的にテストすること。それから、一元的品質に関しては顧客の要求レベルを明確に把握して、それを満たすように開発を進めること。魅力的品質はその後に取り組むところよ」

「それじゃあ、いつまでたっても魅力的品質の向上には取り組めないじゃないか・・・」

伊敷はとても残念な様子だ。(よほどデザインにこだわりがあるらしい。)

「そんなことないわよ。魅力的品質は確かに充足しなくても顧客が不満に思うことはないけれど、充足するためのアプローチは絶対に必要なの。優先順位が他と比べて低いというだけの話よ。一元的品質や当たり前品質を充足することは、魅力的品質を充足するのに比べたら比較的容易だけれど、逆に言えばそれだけで他と差別化するのは難しい。そうなると、同じことをやってくれるのなら安い方がいいよね、と価格競争に巻き込まれることもあるわ。魅力的品質を向上して「たとえ価格が高くても、この会社に頼みたい!」と顧客に思ってもらえれば、そういう競争から抜け出してビジネスをすることができるの。

顧客の要求を実現するのは、当たり前にやること。いかにその後に付加価値を高められるか考えることが本来のエンジニアリングだし、そうした働き方をしてこそ、エンジニアが幸せになれると私は思うわ。ごめん、話が長くなったわね」

「いや、ありがとう。クオリアちゃん」

二人はお礼を言った。

「理想論を言っているように聞こえたらごめんなさい。けれど、私たちの本来すべき仕事はその理想をどうやったら現実にできるか考え抜くことだと私は思うの」

クオリアちゃんはこれからレビューがあるから、といって去って行った。二人はそれを黙って見送った。

「佐藤、今回は悪かったな。テストやり直すよ」

「いや、俺こそ勉強になったよ。一緒に良い製品作ろうな!」

 

ー第3話に続く

 

参考文献: 「ソフトウェア品質知識体系ガイド(第2版) SQuBOK Guide V2」, 2014

参考URL:https://www.juse.or.jp/departmental/point02/08.html

参考URL:http://jstqb.jp/dl/JSTQB-SyllabusFoundation_Version2011.J02.pdf

 

 あとがき

これ書くの結構大変だな! 

明日は書けるだろうか・・・

毎日書けなくても怒らないでください・・・